印章彫刻師　岡本 尚山

お客様の名前を美しく素晴らしい生きた文字で印鑑に彫ること。
人間の英知である古代文字を現代の世界に蘇らせてきた匠の技と心。
作り手の想いをお客様にお話し、仕上げた印鑑を直にお渡ししてきた喜び。
そして、27年もの間、毎日毎日、愚直にただ黙々と、お客様の顔を思い浮かべながら
彫り刻む文字に魂を込め 妥協を廃して
本物の印鑑を彫り続けてきた誇りが私にはございます。

世の中にはたくさんの印鑑屋さんが存在します。
それぞれのお店がたくさんの印鑑を販売している中、私が直接手彫りにて彫刻してきた印鑑たちが、
世界中を探してもどこにもないたった一つのあなただけの宝物としてと輝き続け、
今日も何処かの場所でその使命を果たしているという自負が私にはございます。

印鑑の良し悪しとは一体なんでしょうか。
それは彫刻された印鑑の文字が歴史に裏づけされた正式な書体であることと
人の心を動かすほどの美しさをそなえているかによって決まると私は考えています。
私は印鑑の書体と文字に対しての美しさの基本を大自然の造形美と
人々が使い続けてきた文字の歴史文化の融合に求めています。
自然のエネルギーを取り込んだ、ただ見ているだけで心が洗われる素晴らしい印鑑を作り続けたい。
その想いをかなえるため、まとまった時間がとれるときはなるべく自然豊かな山深い里に足を運び
山々の稜線や木々の立ち姿、穏やかに流れる川などの自然が創り出す線をよくよく観察し
製作する印鑑にそのエッセンス採り入れられるよう心がけております。

実際の印鑑の彫刻に臨む時は、古代文字の完成が見られた秦〜漢代の正しい文字の字形を基に、
自然の造形美にあふれる、動きのある豊穣な文字線を作り出すことを常に心がけております。
人間の英知である古代文字に秘められた想いや願いを見つめ、印鑑という小さな小宇宙の世界に表現していくのです。

そうして創り上げてきた印鑑には、今にも文字が飛び出さんばかりの迫力と
生命の息吹が感じられるとの評価を皆様よりいただいています。
お客様が私の彫った印鑑を所有することに喜びを感じていただいているというご感想、さらに印鑑を使用する場面においては何とも晴れがましい気持ちになるという嬉しいお褒めのお言葉を頂戴しているのは大変ありがたいことです。
それは文字にこめられたエネルギーをお客様自身が全身で享受しているおかげなのかもしれません。
そんなお褒めと感謝の言葉を頂く度に、さらに勉強を重ね、より素敵な印鑑を、もっとお客様に喜んでいただける印鑑を
世に送り出せるよう精進せねばならないと日々思い続けています。